2010年9月11日土曜日

40年前の一瞬の記憶

私が幼稚園にあがる前、高熱を出して寝ていると、きびだんご売りの太鼓の音が聞こえてきて、うわごとできびだんごが食べたいと。

母は何日も熱が下がらず何も食べられなかった私にきびだんごを食べさせようと小銭を掴み、つっかけサンダルでアパートを飛び出し、太鼓の音のする方向へ走った。

しかし、ひとつ目の角を曲がってもふたつ目の角を曲がってもきびだんごの屋台は見つからない。耳を澄ますと確かに向こうからテケテンテンテンという太鼓の音が聞こえる。

子供は太鼓の音だけで、今屋台がどこに居るかすぐにわかる。
どういうワケか大人にはなかなか見つけられない。

結局、母は屋台を見つけられずに近所の乾物屋で上新粉ときなこを買って帰ってきて、きびだんごもどきを作ってくれたそうな。私はその日のことはまったく記憶になく、だいぶ後になってから母から聞いた。

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ふと、きびだんごもどきのことを思い出し、棚にしまってあった上新粉を水でこねて丸めて串に刺して蒸し、きな粉をまぶして食べてみたら、母が作ってくれたきびだんごもどきが甦ってきた。あぁ、これこれ。屋台のきびだんごとは全然違うけど、この串だんごは食べたことある!しかも母がせっかく作ってくれたのに「これじゃなくてきびだんごが食べたい」とぐずったことまで思い出した。

食感の記憶って凄い。