『編み物』
タコ糸で編んだどーしようもないモノを貰ってくれたもみさんからのお題。
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私の母は手先が器用で編み物や洋裁が得意。
子供の頃から洋服はほとんど母が作ってくれました。
だからと言って子供も手先が器用とは限りません。
それなのに、あぁそれなのに。
ふたつ違いの姉妹というのは厄介なもので、小学校に入る前は姉と妹の立場がハッキリしていたのですが、妹が小学校に入った頃から少しずつ年の差が縮まってきて、私が出来ることはすべて妹も難なくこなしてしまう、私が母に怒られたりするとちゃんと覚えていて、自分は母に怒られないような道を進むという、まぁ、きょうだいのいる人なら
分かると思うんですけど、下の子は世渡りがうまいというか。
はじめての編み物は妹も小学生でしたから、私は小学三年生だったと記憶しています。
母と一緒に遠州屋さん(母御用達の手芸用品店)に買い物に行ったら店先に蛍光ピンクの毛糸玉が山のように積んでありました。
母が買い物している間、毛糸玉を眺めているとお店のおじさんが私に「お嬢ちゃんは編み物しないの?」と聞いてきました。手芸にはまったく興味がなく、ただ「なんだかすごい色だなぁ」と眺めていただけなのですが、当時の私は引っ込み思案で(へー!)大人の人から話しかけられてもきちんと返事が出来ない子供だったので、おじさんの問いにも答えられるわけもなく。
そんな私を見て母が「この子は編み物したことないのよ。下の子は興味があるみたいなんだけど」と答えると、おじさんは「じゃあこの毛糸いくつか持っていきなさいよ。練習用だから今日はオマケにしとくから」と茶色い紙袋に4玉入れて渡してくれました。
くれたのにお礼も言えない。
というか編み物なんかする気もないし、嫌いな色の毛糸玉貰ったって困るんだけど。
家に帰ると手芸に興味のある妹は早速ピンク玉を見つけて鼻の穴が膨らんでいます。ここで興味のない姉としては全部妹に毛糸玉をあげてしまえばいいんですけど、もしこれで妹が何か編んだら絶対遠州屋のおじさんに母が見せに行くでしょ。あぁ、やっぱりお姉ちゃんは何も編まなかったんだ、せっかく毛糸あげたのにね、なーんて話になるよね。引っ込み思案だけどそういうふうに思われるのはイヤだ。
で、結局妹と私と2玉ずつで何かを編むことになりました。
2玉じゃマフラーくらいしか出来ないけど、アクリル毛糸だから痒くなるってことで母が選んだのはポシェット。
指をひっかけて編むリング編みのコマ編みで長方形に編んで両端をかがって袋状にして長いヒモを編んでくっつけます。
リング編みってどんなんだっけ?と思い出しながら編んでみたのが上の写真。
この毛糸がもっと太くてまっピンクになったのを想像してみてください。まっピンクのビラビラのポシェットです。誰もそんなもん持っていませんよ。
編みながら、完成したら使わなくちゃならないのかとどんどん気分が重くなってくるんです。隣で編んでいる妹は笑ってんの。そんなに編み物が好きなのか。こんなことなら妹に全部あげればよかった。
実家にふたりで並んでポシェットを編んでいる写真が残っています。母も私が編み物をする姿を記念に撮っておきたかったんでしょう。
そんなことするから私はポシェットを編んでからの十年間、手芸恐怖症になってしまったんだよ。
2010年11月18日掲載