2017年11月21日火曜日

第6回はじめての経験

『プレゼント』

「はじめてシリーズ」を始める切っ掛けになった聖子さんからのリクエストです。貰った方は記憶が定かではないので、贈った方の「はじめてのプレゼント」ということで。

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昭和51年12月某日。同じクラスのT田さんに誕生日プレゼントをあげることになりました。

T田さんはクラスでもいろんな意味で目立つ女の子でした。可愛いというより美しくて大人っぽくて、おっぱいがでかくて、学校が終わったら日が暮れるまで公園でブランコ立ち漕ぎしてるような私と同じクラスにいるってことが不思議なくらい。

好きでも嫌いでもない、ただ同じクラスってだけの存在。
相手も多分そうだったと思う。

それなのにある事件が切っ掛けで急に私とT田さんの距離が縮まってしまいました。

二学期に転校してきた男の子(この子もすごくきれいな顔をしていて髪も茶色く目立つ男の子だった)がクラスの男子に囲まれて「どういう女の子が好きなんだ」と質問攻めにあった時、右手でT田さん、左手で私を指さしたんですよ。

うあぁ?T田さんはわかるけど私もぉ?
と顔を赤らめていたら「あー、そっちのは嫌いなタイプ」って。

どういう女の子が好きかって聞かれてんのに、ご親切なことに好きなタイプはこっち、嫌いなタイプはこっちと女子20人くらいいる中から瞬時に選んだのはスゴイと思うよ。

でも嫌いなタイプは別に言わなくても良かったんじゃね?
こっちこそあんたみたいなのは嫌いだよ!

って言ってやりたかったけど、あまりにもハッキリ嫌いなタイプと言われて気が動転して目を逸らすのが精一杯でした。

窓から校庭を眺めていたら、いつの間にか隣にT田さんが来ていて満面の笑みで「あんなの気にすることないよ!元気出して」って。

えー。好きなタイプって言われたあんたが言うか。好きなタイプって言われたから嬉しくて笑ってんじゃないの?(って言葉ももちろん飲み込んだ)

それから頻繁にT田さんが私に声をかけてくるようになりました。

「なんか今日も元気ないね、悩みがあるんじゃない?」>ないよっ
「顔色悪いけど大丈夫?」>もともと地黒ですから

うあああ、鬱陶しい。

そのうち「来月私の誕生日なの。もり(当時の私の渾名)よりちょっと早く年上になっちゃう」「うち、狭いから誕生日会出来ないの」「今年は誕生日が日曜だから誰からもプレゼント貰えないかも」とじわじわと「こんなに仲良くしてるんだから当然プレゼントくれるよね」攻撃が始まりました。

うあああ、めんどくせー。
あんたを好きだって言ってるヤツがプレゼントくれるんじゃないですか?

と思いつつ、プレゼントを買いに行ってる私って。

T田さんの誕生日に選んだのは本。
自分の好きなモノをあげるというスタンスは今も昔も変わっていないので本好きだった私は本以外のプレゼントが思いつかなかったんです。

でもね、本は好きだけど、プレゼントした本は読んだことなかったの。小学6年生の私のちょっとした抵抗。タイトルだけで決めました。

『友情/武者小路実篤』

結局三十年以上たった今でも私は未読。
ネットでざっとあらすじを読んだけど、ふふーん、そういう話だったのか。
「小学校高学年から」とあったハードカバーを買ったんだけど、小学6年生には早かったかもね。


T田さんとは小学校卒業以来一度も道ですれちがうこともなく。今となってはあのプレゼントをどう思ったのか知る由もありませんが一週間後の私の誕生日には何もくれなかったってことは、私の気持ちは伝わったってことなのかもしれません。

2011年1月6日掲載