2015年9月26日土曜日

GEMINI I LOVE YOU

初めての北海道で出会ったK君を思い出した。

旅先で出会い、そのままつきあうようになったんだけど、私とひとつしか年が違わないのに、彼は横浜中華街のど真ん中にあるマンションで一人暮らし、白い車を乗り回していた。

彼の実家は地元ではわりと有名な薬局で、彼も公立大学の医学生。

つきあい始めて一年たったある日、彼の部屋で突然別れを切り出された。
それまで月に二度、電車に乗って横浜に通い、楽しいデートを重ねていたから私には別れる理由が思いつかない。

理由は「これから大学が忙しくなるから」ということだった。

私の初めての北海道は親に内緒の家出同然の一人旅だった。
K君は大学合格のお祝いに親にお金を出してもらっての一人旅だった。

まぁ、どこの馬のホネともわからないような私とこのままつきあっていていいんだろうかと将来に不安を感じていたのでしょう。K君の気持ちもわかる。しょうがない、別れましょう。

でもはいそうですかと即答するのも芸がない。そこでちょっとゴネてみたら話が思わぬ展開に。

なんと彼は私にお金を渡そうとしたのだ。
そのお金は封筒に入っていたから予め用意されていたものだった。

なにそれ。 私たちはそういう関係じゃないし、お金が欲しくてつきあってるなら横浜くんだりまで電車に乗って会いになんかこないよ。

いや、ごねるふりなんかした私がいけないんだ。こんな人とはとっとと別れて中華街でまんじゅう食って電車に乗って帰ればいいんだ。

私は受け取った封筒を窓の外に投げ捨て、壁一面に貼ってあった川島なお美の巨大ポスターを真ん中から破き、彼の唖然とした表情を確認した上でニッコリ笑って「おじゃましました~」と部屋を出た。

[どうでもいい情報]

K君の消息を検索。大学病院の泌尿器科の医師としてご活躍されているとか。あの時投げ捨てたお金はちゃんと回収したのか、今でも川島なお美が好きかちょっと聞いてみたい気もする。