2024年12月25日水曜日

もげさんに捧ぐ

私の左手人差し指には幅1cmほどの傷痕がある。高校生の頃に出来た傷だから40年モノってことになるのか。

夜中に猛烈にお腹が空いて何かないかと台所を物色していて見つけたのが少し使って封が開いているコンビーフ缶。コンビーフはじゃがいもと炒めて明日のお弁当に入るはずだけど、少しくらいなら母にバレないだろうと


こんなふうに缶を開けたんですよ。

缶の切り口って超切れるのよ。だからどの缶にも切り口に注意してくださいって書いてあるんじゃないか。なのに何故こんな開け方したんだ?

不幸中の幸いで右手は無傷だったんですが左人差し指がねぇ。右利きだから左の力加減が分からなかったのかな?いや、こういうふうに開けたら指が切れちゃうってことに何で気づかなかったんだ?

で、切った瞬間は全然痛くなくて「おっと、やっちゃった」くらいだったんですけど、もうビックリするくらい出血しまして、ティッシュで抑えたくらいじゃ全然足りなくて、仕方なく古いタオルで抑えたところで寝ていたはずの母が起きてきて惨状を目にしたワケです。

片手を挙げて床に垂れた血を拭いている娘を見たらそりゃ驚くわ。後で聞いたらまた泥棒が入って、泥棒と鉢合わせになり負傷したと思ったそうで。

これは本当のことを話さないとまずい。

「お腹が空いてコンビーフを食べようとして食べる前に缶で指を切っちゃった」「ちょっと!どのくらい切ったの?タオル替えないと!」

あれ?全然痛くないんだけど血が出続けてタオルが真っ赤に染まってる!

すると母が「これ、気に入ってたのよね」と言いながら肌触りのいいバスタオルでグルグル巻きにしてくれました。

「痛くないならXX医院さんが夜間診療やってるから今から行ってきなさい。お母さんは朝早いからもう寝るわ」と言って部屋に戻ってしまいました。

まぁ痛くはないから着替えて行ってくるか。

バスタオルを巻いた左手を挙げたまま都電通りを歩いて信号を待っていると交番からおまわりさんが出てきて「こんな夜中にどうしたの?」って聞かれたんで「コンビーフ食べようとして缶で指を切っちゃってXX医院さんに行く途中です」「結構出血してるよね。パトカーで送りましょうか?」「血が止まらないだけで痛くないし、あと2,3分くらいだからいいです」

しかし認識が甘かった。自転車で2,3分だったのよ。通学路にある病院で自転車だとホントにすぐそばなんだけど歩くと10分くらい、しかも上り坂。

バスタオルを真っ赤に染めて病院にたどり着き、受付で指切っちゃいましてと言ったらすぐに診察。傷は深いけど神経を逸れているから痛みがほとんどないと分かり、じゃあ何針か縫っておきましょうってことになり、そこでまた痛くないのに貧血を起こしてブッ倒れてしまい、診療室のベッドでしばらく横になり、その間に看護婦さんが傷口にペッと絆創膏を貼ってくれて診療は終了。

縫わなくてよくなったのはいいけど、ひとつすっごく気になっていたことがあって、診察してくれた先生の性別が分からなかったんです。

人を見た目で判断してはいけないんだけど、背は私と同じくらいだから160センチ前後、ショートカットで銀縁の眼鏡、声が高くて小さいの。名札には苗字しか記載されていなくて、んー、どっちだろう?って気になっていました。

が、翌日学校帰りに病院に寄って同じ先生に診てもらって謎が解けました。
先生の口のまわりに無精ひげが生えていたのです。無精ひげが生えてるからって男性と決め付けるのもよくないんですけど、昨日は気づかなかった受付の掲示板に先生のフルネームが表示されていて、それはもう完全に男の人の名前だったので。