2020年4月14日火曜日

漢字便利辞典

ずっと赤いカバーの「清水日用字典」を愛用していたんだけど老眼鏡なしでは活字が見えなくなってきたので「眼にやさしい大きな活字の漢字便利辞典」を探していました。


この本は進路が決まらないまま高校を卒業し、掛け持ちをしていたバイト先のひとつ「緒方出版」から出版された辞典。

バイトを辞める時に仲のよかった営業のMさんが「バイトだから退職金は出ないでしょ。これ、結構人気の商品だからご両親やおじいちゃんおばあちゃんに持っていってあげなさいよ」と伝票を切って自分のお財布から6500円を出して5冊も買ってくれたんです。

たまたま祖父と会う機会があったので一冊渡したら一週間しないうちに「出版社の担当さんの連絡先を教えてくれ」と電話がありました。祖父はよく商品を使ったり食べたりした感想を手紙に書いて会社に送っていたので、またそんな感じかなと何も考えずにMさんの連絡先を教えました。

しばらくして私の就職先が決まり、バイト先にお菓子を持って挨拶に行くとMさんに「お前さんの知り合いに××さんって人いる?」と聞かれ「あー、それ、私のおじいちゃんです。こないだMさんの連絡先教えてくれって言われたんで教えちゃったんですけど、まずかったっすか?」「やっぱりお前さんのおじいちゃんか。40冊注文があったんだよ」。

「知り合いから譲ってもらった辞書を老人会の友人たちに見せたらみんな欲しいというので、まとめて40冊送ってくれないか」というような手紙が入っていたそうで、まさかその知り合いっていうのが私だとは思わなかったから営業車で横浜まで届けて代金貰って帰ってきたというのです。

あとで祖父に聞いたらお前の名前を出したら相手は割引せざるを得なくなるだろう、定価以下で買うのは申し訳ないから名前は出さなかったんだそうで、太っ腹なMさんのことだから全部タダで!とか言いそうだから祖父の判断は正しかったんだろうな。

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じつを言うと18歳の私にはこの辞書のよさがわからなくて、5冊とも欲しいという人たちにあげてしまいました。

でも50を過ぎた頃から急激に老眼が進み、老眼鏡なくしては小さな活字が見えなくなってきて「そういえばあの辞書!」と思い出して母に聞いてみたら「使ってるから私が生きているうちはあげない」と言われ、ネットで検索してamazon以外で売っているお店を探し、やっと見つけたのが北海道の小さな古本屋さんでした。

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右が外箱込みで使用感ゼロで見つかった大きな活字の漢字便利辞典。
左が辞書をひくたび頭がクラクラしていた清水日用字典。