2022年1月28日金曜日

神の思し召し


新宿界隈でアルバイトを掛け持ちしていた頃、花園神社あたりの電信柱に黒っぽい貼紙がベタベタと貼られていて足を止めて眺めていたら、向こうからその貼紙から出てきたような人が歩いてきて私の横を通り過ぎていきました。

森田童子という人のライブの貼紙だったんだけど、まだその時には森田童子の存在すら知りませんでした。

数日後、出かける準備をしながらラジオを聞いていたら「本日のゲストはモリタドウジさんです」と流れてきて、そこでやっと森田童子はモリタドウジと読むこと、そして森田童子は女の人なんだと知り、対談を聴いているうちにあの日すれ違ったのは森田童子だったんだと気づいて、その日から彼女を追いかけるようになったんでした。

アルバイトで貯めたお金でミニコンポを買い、地元のレコード屋に通ったけど森田童子のアルバムはどこにもなくて。

当時私は中学の後輩たちとバンドを組んでいて、メンバーのひとりが教会の牧師さんの息子で「礼拝に通うこと」「クリスマス会で聖歌を演奏すること」を条件にバンドの練習場所を提供してもらっていました。

練習が終わり帰ろうとすると、今まで開いているのを見たことがなかったレコード屋さんが開いていて、何気なく店の前の100円コーナーを覗いたら、あんなに探してもなかった森田童子のアルバムがあるではないですか。

でも手持ちのお金がありません。

バンド活動をするために仕方なく教会に通っていたので、献金も黒い袋の中に手を突っ込んで先に入っていた小銭を取って落として献金したように見せかけていたくらいですから、財布の中は空っぽ。

お店の人に来週まで取り置きしてもらうよう頼むと「あー、今日でお店を閉めるから取り置きは出来ないよ」と言われ、全速力で走って家に帰り千円札一枚を握りしめて、今度は自転車でレコード屋さんまで戻って無事七枚のアルバムを入手できました。

信心などないのにあの時初めて心から神様に感謝しました。

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写真は1993年発売のCD「ぼくたちの失敗 森田童子ベスト・コレクション」。
興奮して買ってしまったけど、やっぱり彼女の歌はCDで聴くのはちょっと違うような気がして、たまに小さな歌詞カードを出して彼女の言葉に触れるだけにしています。

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もげさんに私信

今日のらじるラボ「六角精児のにっぽん名曲遺産」森田童子の回、お知らせありがとうございました。本編も良かったけど、ふいに流れていたチャック・マンジョーネの「Song of the new moon」にもぐっときました。(この話になると更に長くなってしまうので割愛)